「…」
流川楓はこの状況をどう対処していいか、普段あまり使うことのない頭を使い考えていた。
目の前には1年10組のゲタ箱。 当然、自分の上履きが入っているだろう。
しかし―



12:その唇に



3分前。
いつものようにうつろな目で学校に向かう。
周りを行く同じ湘北高校の生徒達は
「遅刻だ!!」
といいながら走っている。
―流石に3日連続遅刻はヤバイだろう―
そう思ってゲタ箱までダッシュ。
そして、勢いよく扉を開けた…のはいいのだが
ドサドサッ
「!!」
そこにはたくさんの包みが入っていた。時折、カードも混じっている。
しかもご丁寧にリボンをかけて可愛くラッピングをしてあった。
「……」
いろんな思いが頭の中をぐるぐると駆け巡る。
しかし、そうこうしているうちに

キーンコーンカーンコーン…

見事3日連続の遅刻を果たしてしまったのだ。


―なんなんだいったい!
流川は怒っていた。
とりあえず包みを再びゲタ箱の中へ戻し、教室に来てみても、机の中にはまたあの包み。
遅刻した上に「そんなものを持って来てはいかん!!」と担任にはこっぴどく叱られてしまった。
―オレの所為じゃねーのに…。だいたいあれは何だ?
2時間目から3時間目まで寝ていたのだがその隙にもポケットに包みを入れられていた。
それに今日は女子達の視線がいつも以上に痛いのは…気のせいだろうか。
だが、よく見ると貰っているのは流川だけじゃないらしい。
―そう、同じクラスの、学級委員の…名前は忘れた。サッカー部の期待の星と呼ばれているやつ。
さっきも貰ったみたいで
「いいなぁ…何個目だよ、それ」
と、彼の取り巻きが呟いていた。
そんなに欲しーんならくれてやる…
流川はおもわずそいつにこの大量にある物体をあげてしまいそうになった。



部活時間まで女子達はきて
「これ、受け取ってください!!」
と言ってはあの包みを渡してくる。
練習にならなかったので、体育館中のドアと窓を閉め切って練習をした。
ここまでくるとあの包みがなんなのか気になって仕方がなかったから、
流川は花道に―不本意だが―聞いてみることにした。

「おい、どあほー」
「なっなんだ、キツネ」
突然のことに花道はドキッとする。
「…今日は何かあんのか?」
「…は?」
「だから…今日はなんかいっぱい貰うから…何かあんのかって聞いてんだ」
「おめーわかんねーのか?」
バカにしたような態度に流川は
「もーいー。どあほーなんかに聞くんじゃなかった」
と花道から離れようとした。
「ま、待て!バカギツネ!」
あわてて花道は引き止めると
「今日何月何日か分かってるのか?」
「…2月13日」
「だから…それバレンタインのチョコなんだよ」
「…明日じゃねーか」
「ああ、もう明日は休みだろう!?だから今日渡してんだよ!」

…そうか明日はバレンタインだったのか…。
うかつだった。アイツがこんな行事を見逃さないはずはない。
流川は悩んだ。
今日はよく頭を使う日だと思いつつ、ある考えに達する。
―別にオレは男だし、関係ねーよな…

しかし現実はそんなに甘くない。
案の定仙道からは
『明日うちに来いよ』
というメールが来た。
流川は深いため息を1つつくと明日をどう乗り切ろうか必死で考えた。



さて2月14日。
流川は仙道に言われたとおりに家にやってきた。
ちなみに乗り切る方法は…考えていないらしい。
「よく来たな。入れよ」
仙道に促されるまま家の中へと入る。
「で…さ、今日は何の日か…知ってるか?」
きた。今一番避けたい話題だ…。どうしよう…。
「ほら、なんかさアレだし…。こんなもん買ってきたんだけど…」
「え?」
チョコを請求されるのかと思ったら、仙道が何か用意しているみたいだ。
「確かこれ…欲しがってたよな?」
ああ、それは以前雑誌で見かけたお菓子。
流川がおいしそーと言っていたのを仙道は覚えていたのだ。
「あ…」
「ごめんな、他のがよかった?」
流川は首をフルフルと横に振ると
「オレ…何も用意してねー…」
流川は正直に言った。仙道はそれをわかっていたかのように、
「いいよ、オレが勝手に用意したんだし。
腹減ってるだろ?今なんか作ってやるよ」
流川は思った。なんてオレはバカなんだと。
仙道はチョコを要求するどころか逆にプレゼントをくれたのに…。
何か…何か、仙道にやるものは…

かさり…

右のポケットから小さな音がした。
それは駅前で配っていた一口サイズのチョコ。
流川はその金色の包み紙を取り、チョコを口の中へ放り込むと
「せんどー」
ぐいっと襟首を掴み仙道の唇に自分のそれを押し当てた。
「!!」
唇が重なると同時に、仙道の口の中へ舌と共にそれを入れた。
「んっ…」
2人の熱によって小さなチョコはトロリ…と溶けた。
口の中はチョコの甘さでいっぱいだった。 カリッと一緒に入っていたアーモンドが砕ける。
「ふっ…ん…」
仙道は流川の舌も一緒に絡めとリ、深く、激しく流川を犯していく。
最後にはペロリと流川の唇を舐めた。


「ありがとう流川…嬉しいよ…」
本当に嬉しそうな顔で仙道は流川を抱きしめた。
流川もそれに答えるようにギュッと仙道のシャツにしがみつく。
「ゴメン…ちゃんとした物、用意してねーで…」
「ううん。オレ、幸せだからもう十分だよ…」
仙道はそう言うとその唇に小さなキスを落とした。



END



あはは…もう笑うしかないですね…。
お題をやっとはじめたかと思ったらこんなんだし。
流川君別人です。ダメです。もうダメです。
しかもバレンタインデー過ぎてるし!!すいません。きちんとUPするつもりだたったんですけど…。
とりあえずゆるしてください。
にしても私の小説、キスが多いですね…(苦笑)


2004.2.16

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