気がつけば、無意識のうちに流川を目で追っていることがある。
視界の中に流川を捉えている、と言ったほうがしっくりくるかもしれない。
例えばそれが、朝、自転車に乗っているのを見た時や、廊下ですれ違った時、もちろん部活帰りなんかでも、目の端に入ってしまうのだ。
ただ、その機会が一番多いのはやはり部活中で。
得にシュートを決めるときの彼は、(最近、彩子さんに言われて気付いたことだが)どうしても見入ってしまう。
同じチームの奴が、流川にパスをし、空中でボールをキャッチする。
シュートを決める流川はとても綺麗だと思う。
フォームに無駄がないとか、そういうことではなくて(もちろんそれもあるが)言葉では言い表せない、そんな表情をするのだ。
そう、普段の無表情さからはとても想像がつかない、いい顔をしている。
そんなときの流川はとても、好きだった。





「早く!戻って戻って!」
彩子さんが、黄色いメガホンを片手に叫ぶ。
残り時間は1分。

今日一日の練習の締めくくりに紅白戦をやろう、と新キャプテンは告げた。
俺はまだ背中のこともあるので大事をとって見学。
まったく、この天才を何だと思っているのだろうか。しかし、無理をして、また背中を痛めて、バスケができない日々が続くことを考えると、大人しくその忠告に従うしかなかった。
大きな声で叫ぶ彩子さんの隣で、ぼんやりしながらその試合を見守っていた。


その時、流川にパスが渡った。
一瞬の出来事だった。
ダダッという音がして、流川が、跳んだ。
ボールは流川の手からするり、と離れ、まるで吸い込まれるかのようにリングへと落ちていく。
そう、それはただのレイアップに過ぎなかったのだけれど、西日を受けた流川のシルエットがとても眩しくて、いつまでも目に焼きついていた。
きれいだ、と思った。

右手で小さくガッツポーズをした流川は、やはり、とてもいい顔をしていて。
心臓がドクン、と大きく跳ねた。


「さすが流川君!」
「今のシュートすごかったな」
試合終了の笛の音の後、仲間たちが、流川に次々にねぎらいの言葉をかける。
それを流川は適当にあしらうと、ふとこちらを向いた。
ずっと見ていたことがバレやしないか、心配で。でもそれでも目を逸らすことはできなかった。
流川は何も言わない。求めない。
だから、俺も何も言えない。
「…」
「…」
沈黙が続く。
何か、伝えたくて。でも、その言葉は見つからない。
しばらくこちらを見ていた流川も、ふい、と目を逸らすと、体育館の端に置いてあったスポーツドリンクを飲み始めた。
睨みあっていた(おそらく周りにはそう見えていただろう)俺たちに対して、何事もなかったことを安堵するような小さなため息が、ほぅ、と落とされた。
そう、これは何気ない日常の1コマ。


ただひとこと、伝えたいだけなのに。
どうしてこんなにも難しいのだろう。

こちらに背を向けて、青いタオルで汗を拭く流川を見ながら、なんともいえない感情が俺を支配していた。

いつかは、言えるだろうか。この感情を。
きっと、絶対無理だろうけれど、そのとき流川は、俺の好きな顔でいて欲しいと思った。






『めくるめく』




目がくらむ。めまいがする。また、魅力にひかれて、理性を失う。
<大辞林 第二版 (三省堂)より>

べりーしょーとすとーりー
ということで、初!はなるです!花→流ですけど。
短いお話を書くのが好き

2005.3.16
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