If...



「流川」
いつものように公園でバスケをした後、帰ろうとする流川を仙道は呼び止めた。
少々不審に思いつつも振り返る。
「…もしも…もしもさ…」
仙道はそこで言葉を濁した。この事を言っていいのか、悪いのか迷っているようにも見える。
表情を読もうと顔を覗き込もうとするのだが、俯いてしまったからよく見えない。
さぁっと生暖かい風が通り抜けた。
「…なんだよ。はっきり言えよ」
なかなか口を開かない仙道にイライラしつつも、いつもと違う仙道を不思議に思った。
あまりいい話ではないことがさすがの流川にも分かる。

仙道は流川の言葉に後押しされたのか意を決したようだ。
「もしも…オレが東京の大学行くって言ったらどうする?」
顔を上げるとはっきりと言った。
流川の目をしっかりと見て。
「は?」
仙道の言った言葉の意味がよく理解できなかった。
聞こえなかったわけではない。
いや、聞こえなかった方がよかったのかもしれない。
「だから…もしも…」
「もしも…?アンタ、それ本気で言ってんの?」
仙道の言葉を遮り流川は呆れたように言った。
呆れたというよりはバカにしたと言ったほうがいいだろうか。

『もしも』なんて言葉は嫌いだ。
『もしも』はあくまで『もしも』であって、不確かでただの言い訳にしか過ぎない。

「それに…アンタの場合はもしもじゃないだろ?もう決めてんだろう?」
「…」
図星だったのだろう、仙道はなにも答えない。
「ただ聞いてみたいだけだ。違うのか?」
「オレは…流川が行くなって言ったら行かないつもりだよ…?」
仙道は悲しそうに、本当に哀しそうにそう言った。

大学からいくつか推薦が来て正直仙道はうれしかった。
本気でパスケをやろうと思っていた矢先にだ。
しかし、それと同時に悩んだ。
もし東京の大学に進んでしまったら流川とは会えなくなる。
自分をバスケに対して本気にしてくれた彼に。
それは嫌だった。ワガママかもしれない。でも嫌だった。
だから流川に言ったのだ。

「じゃあ、アンタはオレがもしもアメリカ行くって言ったらどうするんだよ?」
「それは…」
答えられない。どうやら流川には仙道が迷っている理由が分かったようだ。
流川がアメリカに行きたいと思っているということは知っていた。
だから遅かれ早かれ会えなくなるということは十分承知だったはずだ。
だが実際にこの時がきてみると人間というものはダメなんだ、ということを改めて実感した。

「オレはバスケするのが何より楽しいし、もっとやり続けていきたいと思う。
だからアンタが行くなっていってもオレは行く。たとえアンタがついていくって言ってもオレはアンタとなんか一緒に行かない」
「るかわ…」
仙道はそれこそ泣きそうな目で流川を見つめた。
淡々と語る流川が羨ましかった。子供じみているかもしれないけれど、でも、やっぱり寂しくて。
流川は別れることに何も感じないのだろうか。そう思っていた。
しかし…

「夢を追うってそういうことなんじゃねーの?」

「そうだろ?仙道?」
今日初めて聞いた仙道という言葉には優しさと哀しさとが込められていたような気がした。
そのとき初めて仙道は流川の言わんとしていることが分かった。
流川自身のことを言っているんじゃない。すべて仙道に向けているのだ。
オレが行くなと言ってもいっしょに行くと言っても自分の決めたことならオレのことは気にするな―と。
流川なりの精一杯の言葉だった。

「そう、そうだよな…オレ、行くよ」
仙道は笑ってやっとそれだけ言うとぎゅっと流川を抱きしめる。

「大学行って…強くなって…バスケ界を驚かせる選手になるから」
そしたら試合しよう。さらに力を込めて仙道は言った。
「…俺が勝つに決まってるだろ、どあほう」
流川は薄く微笑むと同じように仙道を抱きしめた。

風はいつの間にか涼しいものに変わっていた。


end



サイト1周年記念においておいた小説です。
なんとなく思いついた話です。本当に思いつきで申し訳ないんですけど…
書きたいことはもっとたくさんあったはずなのにいざ書くとなると文章にならないんですよね;だからこれだけです。
1周年、本当にありがとうでしたv

 

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