合鍵 「信号機」流川バージョン


いつものように仙道の部屋行く。
いつ頃からだろうか。これが毎週土曜日の決まりになっていた。
しかし、ドアには鍵がかかっているし、チャイムを押しても返事がない。
どうやら珍しくこの部屋の主はいないようだ。
仕方なく持っていた合鍵でドアを開けた。

靴はない…やはりどこかに出かけているのだろうか。
流川は靴を脱ぐと玄関(と呼べるかどうか分からないほど小さい)の端に寄せた。
くんっと仙道の匂いが鼻をくすぐる。いつも仙道がつけている香水。
香水には詳しくないのだが、この匂いは好きだった。

「…きったねー部屋」
リビングのドアを開けるなりつぶやく。
流川も人のことを言えたものではないのだが、
散らばった服、中身の入っていないアクエリアス、読みかけのバスケ雑誌。
いろいろなものがあちらこちらに散らばっている。
しかも普段は綺麗に片付けられているから余計に気になる。
まったく本当にアイツは何をしているのだろうか。
流川は服も雑誌も気にせず踏みつけて、ソファに腰掛ける。
近くにあった雑誌をぱらぱらとめくってみるのだが、一度見たことあるものだったのですぐに見るのをやめた。
仙道がいない部屋は少し広く、寂しく思える。
いつもは仙道がいて、それが当たり前のことだったから不安を覚えた。

それにしても暇である。
ふと、お腹が空いていることに気付いた。
「…何か作るか」
気だるそうにソファから立ち上がるとキッチンへと向かった。

作る、と言っても料理を作るなど流川にはできるはずもない。
つまりカップめんで済ませようというのである。
それにしても狭いキッチンだ。
通路は人が一人通れるぐらいしかない。
くるりと見回してみるがフライパン、片手鍋、洗っていないコップ、とそれらしき物は見つからない。
―仙道はどこから出していたっけ…
流川は細い糸のような記憶を手繰り寄せる。
仙道は流川が来ると何か作ってくれていた。
それがきちんとした料理の時もあるし、もちろんインスタントめんの時もある。
インスタントの時は必ず、
「…棚?」
棚を開け閉めする音が聞こえていた…気がする。
棚はたくさんある。
流川はまず、流し台の上の棚を開けてみた。
だが、料理器具だけしか入っていない。
その隣の棚も開けてみた。
未開封のマヨネーズに小麦粉、パスタ。
ここにはあるかもしれない、と探してみたがやはりない。
「ん?」
下にも棚があるではないか。
きっとここだろう。そう期待を込めて開けた。
「…」
あった。カップめんは確かにあった。
しかし…
「シーフード…」
流川が嫌いなシーフードのカップめんしかないのだ。
腹は減っている。だが、シーフードは食べたくない。
流川の頭の中で必死に思考が戦っている。
長期戦の末、
「寝よ…」
仙道が帰ってから何か作らせればいいという考えにいたったのだった。
(どこをどうすればそういう考えにいたるのかが理解不能だが)
流川は再びリビングに戻ってソファへ腰掛けた。
ふぁ…と大きなあくびをひとつすると眼を閉じる。
やわらかいソファはとても心地がよかった。
―こんなにも待たせておいて…しかも腹減ったし
と、後半はよく分からない理由でいらいらしながら流川は眠りについた。

仙道が帰ってきたら美味しい物を作らせよう。
そう、心に決めて。


end




web拍手に掲載していた物を移しました。
えーっと、「信号機」の流川バージョンということで…
書いたのはこっちのほうが先なんですけどね。
流川がシーフード嫌いというのは私的設定で(笑)
私があんまり好きじゃないんですよ;;
めっちゃどうでもいいですね…(苦笑)

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