夕焼け空の桜の下で

 

「おい、花見行こうぜ。」
そう言ったのは流川だった。
久しぶりの休みに突然訪ねてきて第一声がこれだ。
しかも普段の言動に似合わない言葉だったので思わず
「お前、熱でもあるのか?」
と本気で聞き返してしまった。
途端に流川の機嫌が目に見えて悪くなる。
「行かねーならいい。」
そう言って一人で行こうとするので必死で引き止めた。
「ま、待てよ流川!!ちょっとびっくりしただけだ。 ・・・行くに決まってんだろ。」

こうして季節外れの花見が決定したのである。

「おい、流川。どこまで行くんだよ。」
さっきからこうやって何度も話しかけているのに、流川はいっこうに耳をかそうとしない。
どうやら目的地――桜の咲いている所へ本当に向かっているようだ。
今頃桜が咲いているのか・・・?と不安になりつつとりあえずついてきて30分、いまだ桜は見えない。
「流川、少しは聞けよ。花見ったってこの時期もう桜なんて・・・」
空はそろそろ赤く染まり始めている。
「流川、少しは聞けよ。花見ったってこの時期もう桜なんて・・・」
「うるせぇ。」
そしてすぐにまた歩き出してしまった。
これ以上問いかけても何も答えなさそうだ。
俺はあきらめて大人しくついていく事にした。

なぜ突然花見なんかに誘ったんだろう。
流川が最も苦手としている類の事なのに。
そもそも流川から“どこかに行こう”と誘う事自体珍しい事だ(いつもは俺が半ば無理やり連れ出している。)
いったいなぜ・・・?
俺の頭の中の疑問符は増える一方だった。

考え事をしながら歩いていたせいか、いつの間にか周りは見知らぬ風景になっていた。
そして少し先を行く流川が角を右に曲がって、すぐに
「着いた。」
と、いつもの口調で言ったのが聞こえた。
ようやく・・・という気持ちを抱えつつ角を曲がると――


鮮やかなピンクの花びらが舞い散る世界があった。


桜の木はたった一本だったがとても大きな木で、ずっと昔からここにあったようだ。
よく辺りを見回すと古い建物の影になっていて、広い道からは死角になっているらしい。
その場所の雰囲気も重なり、辺りは独特の空気で満ちていた。
俺はしばらくその雰囲気に圧倒されてただ呆然としていた。

しばらくして流川の声で現実に引き戻された。
「ここは俺しか知らねー。・・・多分。」
そう言って桜を眺めながら話し始めた。
聞けば、先週の日曜日にいつもの朝のジョギングのコースを少し変えて走っていたら一枚のピンクの花びらが降ってきて、飛んできた方向に走っていくとこの木があったらしい。
「それで、前にお前が見たいって言ってたのを思い出して・・・。」
最後にそう呟いて流川は足早に木の下へ行ってしまった。

そういえば前に会った時にそんな事を言った気もする。
覚えていないくらい何気なく言ったんだし、流川が花に興味がない事も知っていた。
でもそれを流川は覚えていて、自分しか知らない場所に俺を連れてきた・・・?
そう考えると自然とほおが緩むのがわかった。
俺の為、というのが嬉しくて仕方なかった。
「るか・・・」
呼びかけた時、突如強い風が吹いた。
そして数千枚という淡いピンクの花びらが辺りをおおった。

その風で流川が見えなくなった瞬間、とっさに俺は駆け出して流川の元へ駆け寄り、
しっかりと流川を抱きしめていた。
「・・・っ、いきなり何しやがる!!」
そう言って流川は腕の中でもがいていたが、しばらくして俺の様子がおかしいのに気づき大人しくなった。
「おい、いい加減放せ。」
そういう声もいつもの凄みはない。

「・・・消えるかと思った。」
そう、なぜだかこのまま流川が消えてしまうのではないかと思った。
俺の前から消えて二度と戻らない、そんな不安、恐れ、焦り。
ずっと奥底にあった気持ちが爆発したための行動だった。

流川、お前はいつまで俺の腕の中にいてくれる?

しばらくの沈黙の後、ぼそりと流川がつぶやいた。
「誰が消えるか。」
「・・・え?」
「俺は消えねー。お前のそばにいる。
先の事は考えねー。今はお前のそばがいい。
俺はここにいてーからここにいる。
だから・・・勝手に消すんじゃねー。」
「流川・・・。」

どうしようもないくらい嬉しかった。
いつもは絶対言わないような言葉を必死で言ってくれた。
――いつでもまっすぐなあの眼で。
さすがに恥ずかしいのか耳まで真っ赤にしてうつむいている。
そんなところもいとおしくてさっきよりもしっかりと、そして優しく抱きしめた。
それに気づいて流川もおずおずと腕を背に回してくる。
その腕と自分の腕の中のぬくもりを感じながら、静かに眼を閉じた。


夕焼け色に染まった花びらの風が静かに、静かに舞っていた。


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はい!第一弾仙流小説でした!! ・・・恥ずかしい〜!!
かっこいい仙道が好きな皆様、ごめんなさい(泣) これが限界でした(カハッ)
小説は難しいし奥が深いです。
かっこいい小説が書ける日は来るのかな・・・ははは・・・。
お目汚し失礼しました!!(逃走)
一応琥珀ちゃんへのプレゼントを兼ねてという事で。
返品可で送ります!!

きゃー!!「Soul Jorker」の琴ちゃんからこんなに素敵な仙流小説をいただいちゃいました!!
しかも琴ちゃんにとっては初小説…!!
こんな素晴らしい物をいただいてもいいのだろうか!!
私なんか、すっごいヘボイラストなのに…!!
なんか仙道さんが切なくて…!!
こういうの大好きなんですけど…!
ああ、もう本当にありがとうございました!!

 

 

 

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